アイアン・メイデンとゾンビ、ホラーとロック

アイアン・メイデンのマスコットキャラクターはゾンビである。私見では、NWOBHMという、「ブリティッシュハードロックの伝統を復活させる」方向性をもったイデオロギーに若干の遊びを加えて発想されたキャラクターではないかと思っている。

いうまでもなく、「復活」というのはキリストのみに許された神聖な出来事であり、救世主以外の存在が「復活」すること自体はキリスト教圏では忌まわしいこととされている。だからゾンビは腐っているし、神聖な知性を失っているわけだ。

だが、ロックは、乱暴に言ってしまえば(このあたりはまた余裕があるときにより詳細に考察する)、神聖な知性から遠ざけられ、人生を腐りながら過ごさなければならないような、あらかじめ死んでいるように抑圧された人々の爆発的な欲望の現れではなかったか。その吹き溜まりにおいてパンクが生まれ、それよりも前にハードロックがロックの先鋭化として生まれ、高尚化しようとしたプログレッシブロックの反動のようにヘビーメタルを生んだのではなかったか(無論それだけではない)。

とすれば、ゾンビは、いつの時代でもロックの正統なキャラクターでありえるはずだ。ロックだけではなく、あらゆるカウンターカルチャーの爆発の象徴として選ばれうる。トランスにはゾンビネイションがあり、鈴木慎一郎によれば、ダンスホールレゲエにおいては狂犬と並んでゾンビが存在感を持っている(トランスもダンスホールレゲエもロックの影響圏内にあると言えばいえなくもないけど)。

このあたりは

怪物の黙示録―『フランケンシュタイン』を読む

怪物の黙示録―『フランケンシュタイン』を読む

とか
恐怖の臨界―ホラーの政治学

恐怖の臨界―ホラーの政治学

とかを読みつつ検討したい。

あとやはりダークファンタジーとロックの関係も考えないとな。

もう少しまともに「歴史」っぽいものも書けそうなのでいま準備中。

↓とりあえず今回はアイアン・メイデンの1982年発表の『魔力の刻印』のタイトルチューン
 各種ホラー映画からのサンプリングが挿入されている。ゴジラがサビ前に登場。

↓1980年のライブ。見た目も音楽性もHMというよりもパンクに近い気がする。
 ボーカル短髪だし。
 この当時、イギリスのストリートにおいてはパンクとメタラーは対立していたらしい。出典不詳だけど。
 ギターのリフが一部バーズムっぽい。←意味のない感慨。

ちなみにゾンビキャラはジャケットに登場します。名前はエディ。
魔力の刻印