さて昨夜のレポートです

結論としては、すばらしいイベントだった。
友達を誰も連れていなかったことは悔やまれる。
エロマンガ・スタディーズ―「快楽装置」としての漫画入門 テヅカ・イズ・デッド ひらかれたマンガ表現論へ
(ちなみに両書とも、翻訳してすぐ海外で発売したら、濃厚なリアクションがありそう。)

永山薫氏がとても幅広い活動を長く続けられていたことに関係しているのか、エロマンガというテーマがなせるわざか、来場者はティーンエイジャーらしき人から相当お年を召されたような方まで、年齢層は厚かったです。もちろん来場者の大半はオタクライクな男性が占めており、女性が来ているのは珍しかったです。

プラスワンの店員さんが豊満な女性が中心だったのに対して、来場者の女性は、オタク系もいたりインテリ風もいたりオシャレさんもいたりして少数ながら多彩だった気がします。ゴスっぽい人がゲストの小谷さんお一人だったのはちょっと残念でした。id:Imamuさんを見つけられていたらゴスっぽかったかも知れないのですが、、、。そういう意味でも残念でした。あ、いちおう売店の売り子さん(アナ・スイ似の女性)はゴスのテイストは入っていたかも*1

久しぶりにオタク男子のいがんだ顔を各種眺めることができて感慨深かったです。しばらく眼にしていないと、自意識で表情を常識的なかたちに保てない(あるいは、いやむしろ保たないと書くべきか)人たちのことを忘れてしまいそうになる。その点で、漫画読みとしても現代的な物書きとしても、そのスタンスというか在り方そのものを深く尊敬してやまないOHPしばた氏の目尻というよりは眉毛の形には、言い知れぬ心持ちになりました。表情に深く意味を見出しすぎると面相学的なトンデモ学説みたいになりますが、それでもやはり、特にコミュニケーションが重要になる文筆活動家の表情というのには、意義深いものを感じてしまうのです。

そういう意味で今回の司会でいらっしゃった伊藤剛氏のイケメン振りは佇まいのオシャレさ、書かれるもののクールさと相俟って、やっぱ普通にかっこいいなあと思わされるわけです。メインゲストの永山氏は、映画俳優のような臭い立つようなおっさん(おっさんと書くと失礼な響きだから「おっさま」と書きたいんだけど、それもかなりニュアンスが違う)で、こちらもとてもかっこよかったです。かっこいいといえば、東さんが体重50キロ台だったころはさぞかし少年風の切ないかっこよさが漂っていたのだろうなと思ったわけですが、いまでは立派なオタク中年ライクな雰囲気に全身を包まれ、でもすごく幸福そうでうらやましかったです。すぐそばに座っていたのですが、お酒をカウンターに頼むときの表情の晴れがましさは、まるで往年の大女優のようでした。

その点、今回唯一(?第一部しかいなかったので後半のことは知らない)の女性ゲストだった小谷真理氏はいただけなかった。高原英理についてもいえることなんだけど、ゴスについて語る人が人前に出るときには、個人的には、驚嘆するほど美しいか、あるいは驚嘆するほど醜いか、少なくともそこに驚嘆を伴ってもらいたいのに、近所のおば様が気紛れにゴスファッションを取り入れてみましたみたいな格好をしていて、とても残念でした。とにかく普通だった。小谷真理さんは東さんの圧倒的な知性を前にただ感嘆するだけの凡人で、しかも聞かれてもいないのにごくつまらない自慢話(三浦雅士を10年前から批判してたとか)をするし、よっぽど話してるときに野次ってやろうかと思った。個人的な退屈で場を乱してはいけないと思ってやめたけど*2

『F改』でもそうだったけど、フェミニストとしてのスタンスがあんまり問題意識や危機感を喚起してこないのがとても不思議だった。本人に問題意識や危機感があんまりないんじゃないだろうか、、、。と思ったのは僕のごく狭い知見からの印象なので、小谷氏の優れた業績とか、すばらしい評論とかがあるならぜひ誰か教えてください。夫の巽氏の論考に強く興味があるので、フェミニストなのに結婚している小谷さんの思考にも本当は興味があるんですが、、、。ちなみにフェミニストとしての問題意識が微妙によくわからないのは、『ヴィジュアル系の時代』の著者の井上貴子さんについても思ったことがある。井上さんには以前メールでご指導を頂いて*3
以来、お返事もさしあげず無礼を働いている者なので、えらそうなことを書くのは恥ずかしいんだけども。

あと大塚さんに対して東さんが欠席裁判みたいな態度をとらなかったこと、対して露骨に小谷氏が三浦氏に対して欠席裁判的な党派的罵倒をしていたことも印象的だった。例のサントリー学芸賞の騒ぎに対して伊藤氏がブログで割りとクールめな態度だったのは個人的にはかっこいいなと思っていただけに、『エロマンガスタディーズ』出版記念イベントであの話を蒸し返す態度はいかがなものかと思ったし、それに便乗して三浦氏の老害を論う小谷氏は醜かったし、誰もそれを止めなかったのは情けないと思った。僕は別に三浦氏については調子がいい人だとしか思っていないのだけどちなみに*4

*1:前から欲しかったid:chidarinnさんが参加されてる同人誌が売られていて、それにちょうど永山氏が実名で書かれた小説が収録されていたので思い切って購入。しかし買い方を間違えたのか、該当号が売り切れていたのか、小説の後半が収録されていた第二号だけ買えなくて、前半が面白かっただけにちょっと後悔。ちだりんさんの論考は近々読みます。

*2:誰か小谷氏が話してるときにカチカチカチと歯を鳴らしている人がいたけど、あれは一種の抗議だったのではないかとか思った。

*3:ご指導と書くと大袈裟かも。著作についての感想と、自分の論考をメールに書いて送ったら、お返事をいただけたという程度のことです。

*4:偶然あのとき『大航海』の「現代とファンタジー」特集を持っていたので、「大航海なんて雑誌、誰も知らないよね?」という発言には笑った。