さすがにトンデモかも(俺が)。

http://d.hatena.ne.jp/mohri/20070311/1173637654
↑「僕の考えたヴィジュアル系の定義」という文章が公開されているようです。
まずはその短さに驚き、次いでその的確*1さに感嘆したんですが、どうも違和感が残りました。一日ほど考えて、その違和感が要するに的確に定義しすぎていることが原因だと気づきました。id:Imamuさんも書いていらっしゃるように、定義は難しい。というよりも、私見ではヴィジュアル系というのは「〜系」なのであって、源流から傍流までの膨大な「連なり」の様相を示すものでしかありえないのではないかと思っています。源流と思われるものを指摘するだけで最小の定義ができるようでいて、傍流まで含めたり傍流の局所的な源流を求めて別の定義を出したりすることで、無数に定義が可能になってしまうじゃないかと。それって定義じゃないじゃんという話にもなるかと思うんですが、それ言ったらそもそもがアカデミックな言説じゃないところでの「定義」なんて厳密に規定することには大した意味はないわけで。そこんところでぐにゃぐにゃやるのがブログ言説の面白いところだと認識している次第ではありますが。

で上記の文章は確かに最小の定義に近いものであるという意味で特筆に値すると思います。加えて、僕自身もヴィジュアル系の元祖のひとつとして捉えているBUCK-TICKを簡潔な理由でヴィジュアル系の範疇から外しているのも参考になりました。「なるほどそういわれてみればそうかも」的な。ただ微妙なのは、そして微妙なことを書き出すと上掲リンク先文章の長所である簡潔さが損なわれるんですが、根のない文化などないという点、それからパンクもメタルもそれぞれ根のある文化であるという点、さらにいえば英国のサブカルチャーもヘブディジ『サブカルチャー―スタイルの意味するもの』に書かれているように英国だけに根ざすものではなかったという点が書かれていないので、それはそれでまた違和感の原因になっていたんだと思います。

バクチクなんかはポジパンの影響受けているとしか思えないかも知れないんだけれども、まずそのポジパンやゴシック文化には強いオリエンタリズムがあったり、日本のパンクから英国のパンクへの影響もあったりして、必ずしも日本ばっかりが影響を輸入していたわけではないことを考えると*2、「正しい輸入」ってのの適用範囲にバクチクが含まれるかどうかという問題が生じてくる。要するに「バクチクがポジパンの影響を受けている」という規定そのものが「ヴィジュアル系以前のサブカルチャーでは外国→日本の一方的影響関係があった」という前提に囚われている気がします。ソース未確認だけど日本のポジパンであるマダム・エドワルダの美学がイギリスのポジパンに影響を与えたって話もあったし、バクチクがポジパンの影響を受けていたと言っても、それが必ずしも英国からの輸入だけであるとは言い切れないものがある。

バクチクは「英国的サブカルチャーの正しい輸入」を理解している環境が背景にあっただろうという点がビジュアル系としては特異であるのは確かだと思う。人脈的に関係のあるボウイがブレイク直後に空中分解した後釜として音楽産業の寵児的ポジションを得たであろうバクチクと、そのバクチクがひとつの「アガリ」のポジションを占めたまま現在に至るっていう環境が前提で活動しなければならない後発とは条件がそもそも違う。要するにバクチクが英国系を濃厚に持ってるから、後発は米国系(つまりメタル色濃い目で)で行こうという方針があってもおかしくないだろうと。そこにちょうどよく元気なエックスが現れ、、、みたいな陰謀説にするとアレですが、事後的にエックスが新たな市場を切り開けるということが発覚するのは、西海岸系スラッシュメタルがイケるということの最上の証明だったと思われるわけです。

あー、あとサブカルチャーの「正しい輸入」ってのは元来、理想としては我有化が含意されているわけなので、「『正しい』輸入」って書いて体裁だけ取り入れているというニュアンスにしているのであれば、上掲リンク先の文章は日本のサブカルチャーを軽蔑していると言われても仕方がないと思う。そんなに日本のサブカルチャーは貧しくないと僕は思う。えらい評論家がなんて言ったか知らないし興味もないけど、日本のサブカルチャーを軽蔑する感性の貧しさは日本の文化の貧しさを物語っていてとても切ない。まあその切なさに泣きゲーのような*3面白さと価値や可能性がひねくれた形であると言えばその通りであり、ヴィジュアル系なんかその最たるものではあるので、こういう展開は願ってもないことのような気もしないでもなく、想定した雛形まんまの文章に出会って驚いたってのもありつつ。


以上を考慮すると、結局定義の難しい「〜系」という呼称が採用されたことがいかに適切だったのか、あるいは定義から遊離しうる「〜系」という呼称がどれだけ当の文化を育て得たのかが理解されると思います。いやまず僕の文章が理解されない気がするが。我ながら錯綜しすぎ。でも的確な定義に補足するならこういうのも有りかと思いもするのでした。

ではバクチクからエックスへのポジパン的マインド(というか泥酔と耽美と猟奇性)の伝承を視るような思いのするコレを。


やべえやっぱり櫻井さんは何度見ても美形すぎる、、、、。
そして本当に口下手なんだなあ、、、頑張ってるのが痛々しいくらいだ、、、。
これでもテンション高い方らしい。威嚇いいなあ、、、。
いやまあここでこういう人に回すのも裏でなんかありそうだけども。

あと今日十年越しに気づいたんだけどマジで、『殺シノ調ベ』って「killer tune」の直訳なんですね。なんで気づかなかったんだ今まで、、、。

*1:追記:ブクマコメント読んだら、確かに最近のV系には該当しないことも多そうなので、「的確」っていうと違うのかも。簡潔さ、と表現すべきか。要するにシーンに対する距離が開いているってことなのかも知れませんが。でもこんなに長文書いてしまう僕はV系のライブにほとんど行ったことがありません。

*2:この文化の輸出入の仮説は立証が必要なのかも知れないけどそういうの面倒くさいからやってない。でも僕がやるしかないのかもなあ、、、。しかしなんのために、、、。

*3:やったことないけど