ズラウスキー『ポゼッション』

大学にいたときから気になっていた作品。人気があるのかなんなのか、どのビデオショップでもだいたい見かける。ネットで感想を検索したところ、あまり好意的なものがなかったり、逆に熱狂的にファンがいたりとびみょうん感じだったんだが、天才肌の知人が生前に絶賛していたので是非鑑賞したいと思っていたのだった。
「開始数分で椅子が宙を飛ぶ」とか「独特の触手系クリーチャーがイザベル・アジャーニと絡むシーンが艶かしい」とか非常に気になっていたのでようやく鑑賞できてうれしかった。冒頭から、建築・小物・衣装が圧倒的に美しく、もちろん役者*1もよくて、カメラワーク*2や音楽も凝っているし、、、、。というのはディテールに過ぎない。もう少し大きなところで言えば、「椅子が宙を飛ぶ」に類するような派手で容赦手抜きのない演出が素晴らしい。まさかあのマンションがあんなことになるとはとか。
張られた伏線を覚えられなかったりしてこの映画を「ダメ映画」というひとは多そうだけど、家庭に妻を縛り付けることの不条理とか、夫が仕事で不在になっているときにも生活している奥さんの存在(あのいつもたくさん抱えている買い物袋!)とか、両親が不和になって可愛そうな子供とか、夫の仕事が国に仕組まれていたところとか、かなり極大なところへ接続していくテーマとか、そのテーマを愚直なまでに具現化しているストーリーとか、『トゥモロー・ワールド』やシャマラン映画にも通じる素晴らしさがあった。要は中途半端なバカにはわからない映画ってことかな。わかったからといって、真性のバカだからいまいち喜べないのかも知れないけど。
ともあれズラウスキーは要チェックだなと。「黒沢清に似ているよね」と言ったら「黒沢清がズラウスキーに似てるんでしょ」と言われた。黒沢清といえば、
このインタビューがとにかく熱い。僕がちょうど訊きたかったことがうまい具合に質問されていて感動する。『叫』は素晴らしかったのでDVDで買ってもいいなあ、、、。お金ないけど。あと黒沢清が今年一番面白かったって言ってたらしい『ワイルドスピード3トーキョードリフト』は是非観たいところ。カーアクションものといえば、四輪車じゃなくてバイクものだけど『トルク』をもう一度観たいなあ。

*1:イザベル・アジャーニの鬼気迫る演技はもちろんのこと、『オーメン・最後の闘争』でも怪演していたサム・ニールのダメDV男ぶりや、愛人役を演じるハインツ・ベネットの別の意味でのダメ男っぷり(金持ちだが母親に溺愛されている教養もあるマッチョ←なんかほんとに別のいみで最低)など、ほんと気持ちいいくらいに最低な人々、、、

*2:イザベル・アジャーニとのあいだに一子をもうけた撮影監督。ゴダールとも仕事をした経歴あり。