ちなみに改めてこっちの対談を白井さんの対談と絡めて読むとしたら、こっちのほうではもっぱら自由主義が前提になっていて、人間集団の生成のほうはまったく視野にない感じだったなという印象が強い。宇野さんは「現状」を持ち出して、彼の言う「古いもの」を切る素振りでは注目に値するかも知れないけど、それ以上のことが出来ているようには見えないのが残念。なんかみんながうすうす思ってることをズバッと言ってくれて気持ちがいいけど、じゃあ何か希望を指し示せるかというとそうではないという。悪口が巧い以上の何があるのかというか、そして、それがない限りでは、実は悪口も大して巧いわけでもなくて、単に口が悪い人というところに収まっている気がしないでもない。それでもそれだけでなんとなく、彼が十分に希望を担っていて、かつ重宝されてしまうように見えるのがさらに残念ではある。いやしかしまあ、批評家はそれでいいのかも知れないけど。