白井聡『未完のレーニン』も読んでいる。
プロレタリアートとブルジョワジー(労働者と資本家)の対立から「国家」が生まれ、この第三項たる「国家」によってプロレタリアートとブルジョワジーの直接的な対立がなくなること。ブルジョワジーは国家から経済的な支配力を保証され、逆にブルジョワジーは経済的に国家にエネルギーを補充する。ブルジョワジーと結託する国家と、プロレタリアートは対立している。
ブルジョワジーは国家に要求される支出などを維持するために疲弊せざるを得ず、ブルジョワジーの疲弊に伴って国家のエネルギーも困窮するに至る。経済的にはプロレタリアートはブルジョワジーに搾取されているが、プロレタリアートが暴力的に対峙せざるをえないのはブルジョワジーではなくて国家であり、そしてブルジョワジーも国家と蜜月関係を結べているわけではないという指摘は重要だろう。これはレーニンだけではなくて、ネグリ+ハートの『<帝国>』と通じる現在的な問題でもある。
レーニンがおもしろいのは、そして『未完のレーニン』がおもしろいのは、この三項関係を逆転させる「普遍的な力」を見出すところだ。国家の暴力=権力は「少数のブルジョワジーが多数のプロレタリアートを抑圧して搾取する資本主義を維持する」ための「特殊な力」であり、実際にはその「特殊な力」を行使するという「労働」はプロレタリアートが担っている。これに対してレーニンはプロレタリアートの本来的な労働として「普遍的な力」を見出す。ここで「本来」というのは懐古的なものではなくて、未来将来、資本主義が打倒されたあとに実現する状況を見込んだうえでの「正当なもの」という意味であり、若干アクロバティックな語法になっていることに注意。
まだあと少し読み残しがあるため、多数派と少数派の対立の問題など、未解決なところがあるので、引き続き読み込みたい。
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