東浩紀「サイバースペースはなぜそう呼ばれるか」読み途中

あいだが開いてしまったが。今回は2−3についてメモ。
ディックの作品について
・オブジェクトレベルとメタレベルの反転あるいは入れ子構造を、小説全体のフレームとして採用
・交替=後退の前提となるそれら「レベル」の統一性自体を蝕む「不気味なもの」の導入
という二つのモチーフについてまず議論される。そしてこれらの二重性がディックの政治的社会的な認識と深い連関をもつことを、東は指摘している。50年代後半から60年代にかけての「もっとも政治的な時期」において、ディックは高度消費社会と冷戦構造における核抑止の論理とをシミュラークル永劫回帰的状況を描いていた。
ちなみにこの論文の註でも挙げられていたけれど、東浩紀の重要な参照先として巽孝之がいると言えるだろう。今回は併せて『現代SFのレトリック』を読んでいるのだけれど、批評的強度は東とだいぶ性質を異にしてはいるものの、非常に参考になる。未読の向きにはオススメ。

現代SFのレトリック

現代SFのレトリック